『2005年7月、食育基本法が成立し、食育は国民運動として展開されようとしている。死亡原因の64.8%を占める生活習慣病の低年齢化もさることながら食料自給率の低下も職の乱れによる青少年犯罪の凶悪化、すべて日本の将来を脅かしかねない重要な問題だ。
躾をする大切な時期である三歳から八歳頃に一日三回、一年間で計1095回食事のチャンスがある。その内の180日ほどは学校給食があり、クラブ活動、塾などで遅くなることもあるがそれでも年間に800回ほどは家族と一緒に食卓を囲む機会があった。
しかし、この数字はいま150回前後まで低下し、 中には50回以下という家庭すらある。問題は食事の回数だけに留まらなかった。かつての日本では家族一緒に同じもののを食べるのが常でしたが今は親子別々に好きな料理を食べている。これを「個食」(バラバラ食)と呼んでいる。このような家庭は、
栄養に偏りがあるだけでなく、わがままで協調性の無い
子どもを育ててしまう。キレる、ムカツク、そして揚げ句に殺傷事件を起こしてしまう青少年を増やす温床ともなっているのが現実。
「こ食」には「個食」のほか「孤食(家族が不在の食卓において一人で食べること)、「固食」(自分の好きな決まったものしか食べないこと)、「小食」(いつも食欲が無く食べる量が少ない)、「粉食」(パン中心の粉を使った主食を好んで食べること)がある。「こ食」になったら心と体の赤信号。身体に悪いだけでなく性格まで変わってしまう。当然正しい食事作法や食文化が身に付くわけがない。
食育がしっかりしていないと、知育、徳育、体育はバラバラになってしまう。
食育の3つの柱
1 「選食力」健康を維持する食べ物をきちんと選ぶ力を身につける。インスタント食品やファストフードのように手軽で手短な食事ではなく、旬の食材や
栄養素の組み合わせを考えて食べることが必要で、親も食に対する知識と選食力を身につけることが大切である。
2 食事作法を身につけること。日本にいる欧米人が箸を上手に使っている野に対し、学校の先生の47.1%が正しく箸を持てないという調査結果がある。「正しい箸の
使い方」「食べ物を粗末にしない」「好き嫌いをなくすこと」「いただきます」「ごちそうさま」という習慣を身につけさせて欲しいものだ。
3 地球の食を考える。日本の食糧自給率は
カロリーベースで40%と先進国では最低の水準である。約40年前の昭和40年に73%だったことを考えるとどれだけ低下したかわかるでしょう。しかも60%は海外からの
輸入に頼っていながら食料の3分の1を残飯として廃棄している。このような恐ろしい現実を日本人のほとんどが知らない。そのような教育を受けていないからである。
世界に目を向けると、8億4200万人が上や栄養失調で苦しみ、年間1250万人が餓死している。
東京都の人口と同じくらいの人々が食べられなくて死んでいる。この現実に目もくれず、当たり前のように飽食を謳歌している日本人に強い危機感を抱いた。
良い人を育てる、それが食育
13年前世界20カ国の高校生に「先生を尊敬しているか」という調査をした。最も高かったのが
韓国の84.9%。次いで欧州の82.7%、アメリカの82.2%、
中国の80.3%などとなっている。これに対して日本は21%という驚くべき結果が出ている。50%を切ったら国歌として危ないと言われている数字である。
食育推進会議では、2010年度を
目標に
@ 食育に関心を持つ国民の増加(90%以上に)
A 朝食を欠食する国民の割合の減少(小学生で0%、2,30歳代男性でともに15%以下)
B 学校給食における地場産業を使用する割合の増加(30%以上)
など9項目を揚げて取り組んでいる。
「食」という文字を分解すると「人」「良」となる。一人でも多く良い人を育むこと、それが食育の究極の目的なのである。』(致知 2006年8月号 青少年への食育がこの国を救う 医学博士 服部幸應 より抜粋)
今の日本で起こっている問題の原因を探っていくと、学校教育の崩壊、家庭の崩壊、そして「食」の問題にたどり着く。日本という国は経済や科学技術の面で高度成長を続け、国民の平均的な経済的水準は素晴らしいが、国民の心の水準は世界平均より上に位置するとは言い難い。物質的な豊かさが満たされているにもかかわらず、心は満たされていない人が非常に多い。教育基本法で愛国心の問題が出ているが、日本人がもっと日本食の良さを理解し、日本食を食べることが本当の意味での愛国心ではないだろうか。
日本を良くしていくには、「朝食をしっかり食べる」「正しい箸の使い方をする」など大人も子どもも今すぐに実行できることをみんなで取り組むことである。
この日本を次の世代に継承していくには、「食」というものにもっと国民一人ひとりが関心を持つことが重要である。